読書(健康関連)

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注目書籍のご紹介


葬られた「第二のマクガバン報告」(中)T・コリン・キャンベル、トーマス・M・キャンベル著、松田麻美子訳、グスコー出版、定価1,800円(H22.6.22)

乳ガン究極の予防法は発症前の乳房切除か?
著者は、心臓病、肥満、糖尿病などの生活習慣病の究極の予防・治療法はプラントベースでホールフードの食事であることを、多くの確かな研究から明らかにしている。
 
三代にわたって乳ガンを持つ家系の母親が、初潮間近の娘の乳ガンリスクを心配し、乳ガンになる前の乳房を手術で切除することについて、著者に助言を求めてきた。その母親は、遺伝子だけに注目し、食べ物も乳ガンにとって重要な要素であることに気づいていなかった。

一般に誤解されているが、遺伝子異常を原因とする乳ガン発症は、わずか数%に過ぎない。ほとんどは動物性食品と精製炭水化物食品の多い食事により、大量の女性ホルモンにさらされ、コレステロールのレベルが高まることによる発癌だ。

また、大腸ガン、前立腺ガン、などのガン発症に食事がどう関わるかを述べ、種々の自己免疫疾患についても、欧米型の食事がその原因であることを、多くの研究成果を用いて示している。

著者は、種々の確かな研究結果に基づいて、健康と食事についての一般常識を覆す。健康のために、プラントベースでホールフードの食事を推奨している。しかし、現実には真実の情報が多くの偽情報により隠蔽されている。その実情については、続く下巻が楽しみだ。

葬られた「第二のマクガバン報告」(上)T・コリン・キャンベル、トーマス・M・キャンベル著、松田麻美子訳、グスコー出版 定価1,800円(税別)(H22.1.9)


(松田麻美子先生が新たに訳され昨年末に刊行)

牧場で育った著者は、動物栄養学の研究で「より良質の栄養摂取」により牛や羊を早く成長させる方法の発見を目指していた。

1965年、フィリピンの栄養失調の子供を救う全国プロジェクトを援助する仕事を始め、「最も高タンパクの食事をしている子供たちが、肝臓ガンになるリスクが最も高い」という事実を発見した。著者は、タンパク質はガンの発生を増すというインドの基礎研究に注目した。 常識に反する結果を受け入れ、研究者としての危険を冒すべきか否かの選択を迫られた。

著者は、親族の死の経験から、ガンへの理解をもっと深めるため、どこでも、研究が導くところへ進んでいく決意があった。そこで、「食生活とガンの関係」に焦点を定めての研究を精力的に行なうことにした。研究助成金を取得し、次々と成果を上げていった。

動物実験で発ガン物質とタンパク質の複雑な関係を見出し、人間については、中国で大規模な疫学研究「チャイナ・プロジェクト」を指揮し、種々の病気と食習慣との関連性を見出した。そして健康な食生活は、単に個々の栄養素の寄せ集めではなく、植物性の食品丸ごとを摂取することによる、と明らかにした。

この本を読むと、著者の科学に対する真摯な態度が一貫していて、好感がもてる。

種々の理由でアメリカ政府が無視しても、原著はアメリカ人の食生活の変化に大きな影響を与え続けている。今回「超健康革命」の松田麻美子先生による邦訳で、日本人の食生活にも良い変化が起ることが期待される。今後の続巻も楽しみだ。

『心臓病は食生活で治す』コールドウェル・B・エセルスティン・ジュニア著、松田麻美子訳

松田麻美子先生とエセルスティン先生
心臓病でバイパス手術もできないと見放された患者さんたちが、食生活を変えるだけで病気を克服することができた。画期的な治療法を紹介する本が松田先生により日本に紹介された。(H20.8.28に紹介した"Prevent and Reverse Heart Disease"の日本語訳です)

医師の家系に生まれ、1968年ベトナムから帰還した著者はオハイオ州
のクリーブランド・クリニックの一般外科医として活躍していた。著者の家系には有害な食習慣からくる種々の病気があり、父親は心臓病で亡くなっていた。外科医の仕事をエンジョイしてはいたが、自分が基礎疾患を治療していず、次なる犠牲者を防ぐために役立つことをしてこなかったことに気づいた。ガンや心臓病に襲われた人を機械的に治療するのではなく、これらの病気を予防することへの関心が医師たちに欠けていることに気づき、多くの文献を漁り、栄養摂取と病気の深い関係に気づき、まず自ら食事を変えることでコレステロール値を下げることができた。その後奥様など周囲の者もそれにならった。クリーブランド・クリニックの検討委員会の了承を得て著者の実験が始まった。

1985年から1988年にかけてクリーブランド・クリニックの心臓専門医から24人の患者が著者に紹介された。全員が進行性の冠動脈疾患にかかっていて、殆どは狭心症や他の症状のために衰弱していた。しかもその大半は、不成功に終わったバイパス手術や血管形成術を1、2度経験していた。喫煙者や高血圧の人は誰もいなかった。当初男性23人と女性一人で、エセルスティン博士の勧める食事をすることに全員が同意した。この食事では摂取するカロリーの9〜12%が脂肪で、乳製品、油、魚や肉を全て取り除いた食事をすることになった。またコレステロール低下薬も処方した。最初の12から15か月の間に脱落した患者が6人あり、最後まで続けたのは18人になった。
2年間は2週間ごとに詳細な食事のチェックと診察、カウンセリングを行なった。また3、4か月に1回グループ全員が博士の自宅に集まり、レシピを紹介しあったり、情報交換しお互いに励まし合った。

最初の5年間は月に2回以上血中コレステロールを測定し、次の5年間は月に1度、それ以後は3か月に1度測定した。栄養摂取プログラムをしっかり守り、コレステロール低下薬を使うことで、コレステロール値を平均246mg/dLから137mg/dLにまで下げた。LDLコレステロール値は82mg/dLとこの種の研究では最低を示した。いずれの患者の自覚症状もかなり早期に改善した。また心臓のPETスキャンによる検査で、ライフスタイルの転換により3〜12週で心筋の血流の改善が認められた。5年後に血管造影検査を行なった11例ではいずれも冠動脈の狭窄の改善が見られた。12年間の研究期間に全員が改善し、その後他の病気で亡くなった3名を除き、20年経ってもこの食事を続け元気に暮らしている。一方最初の12から15か月に脱落した6名は通常の心臓病専門医の治療を受けていたが、いずれも症状が悪化し、死亡した者もいた。
なぜ食事療法がこれほどの効果を上げるのだろうか。プラントベースの食事を取ることによって血管内皮細胞の一酸化窒素産生能力が向上し、血管を拡張し、プラーク形成を防ぎ、さらにできてしまったプラークを減少させる可能性さえあるのだ。

では、なぜこういった治療法が広まらないのか。心臓専門医は手術等により高い収入を得ていて、また政府の勧める食事ガイドラインは業界の利益に反することを打ち出せないという事情があるからだ。

この本には、どのような食事を取れば良いかを示すため、エセルスティン博士の奥様によるレシピが183種類紹介されている。
血管造影、PET検査などの実例も示され、松田先生による日本の読者向けのコメントも加わって、読みやすい。
自分の健康は自分で守りたいと考える方、医学に関心のある方は必読だ。著者、訳者の情熱が伝わってくる。

「賢い皮膚-思考する最大の〈臓器〉」傳田光洋著、ちくま新書、定価720円(H21.7.21)

皮膚は約3Kgの重さがあり、最大の臓器だが、まだまだ分からないことが多い。著者は表皮を形成するケラチノサイトに注目した。皮膚のバリア機能の維持においてケラチノサイトのイオンポンプによるイオン勾配が大きく関与することを示した。またケラチノサイトに痛みを感じて神経に伝える分子装置TRPVやP2X3が存在することを、世界で初めて証明した。表皮はその他に光、音、酸素濃度も感じることができることが分かっている。
種々の刺激に応じて細胞同士が情報のやり取りを行ない、自律的にバリア機能を維持している。

現代日本の生活環境は湿度が低く、皮膚バリア機能の維持には悪条件となっており、アトピー性皮膚炎が増える要因となっている。皮膚のバリア機能はストレスやホルモンバランスの乱れで低下し、逆に皮膚への刺激がホルモンを通じてストレスを軽減させることも示されている。また表皮には一酸化窒素を放出し、血管やリンパ管を広げる働きがあり、コルチゾールやオキシトシンなどの「こころ」に影響を及ぼす物質が合成されている。

現代生物学では、分子レベル、DNAレベルの研究が中心となっており、それが実際の生活にどうつながっていくかが大きな課題になっている。著者は、ひとつの細胞が集合すると何が起きるか、さらに異なる性質の細胞集団の間の相互作用で、どんな巨視的現象が起きるのか、そういう方法論を示す科学が必要となっている、と指摘する。
その例として、一つの表皮細胞を刺激し、カルシウム濃度の変化を詳細に追ったデータを元に、その興奮が隣の細胞に伝わる様子をコンピュータシミュレーションで見ると、さまざまな表皮の重要な機能が細胞同士の情報のやり取りによることが証明できた。
皮膚の機能の解明と、その予防・治療への応用について今後の展開が大変期待される。

「傷はぜったい消毒するな」夏井睦著 光文社新書 定価840円 (H21.7.14) [#bb488d1a]

湿潤治療の夏井先生の一般向けの新著。外傷の治療について生物学的見地から考察を加え、消毒しガーゼをあて乾燥させる方法が無批判に長く続けられてきた背景を、医学の歴史から明快に論じ、湿潤治療の登場・普及がパラダイム変換の例であると論じている。

そして、正常細胞にも有害な消毒をし、ガーゼを用いて乾燥させることで、痛みを引き起こし、治癒を遅らせるばかりか却って悪化させてしまう治療が、大学病院では今だに専門の治療として行なわれている実態を痛烈に批判している。また熱傷などに使う軟膏がいずれも比較的健常な皮膚に塗っても痛みを感じるもので、そういった軟膏を使わずラップ等で覆うだけで痛みなしに傷を治すことができることを実例で示している。

皮膚の健康を維持するのに常在菌が重要な役割を果たしている。石けん、シャンプー、化粧品に含まれる界面活性剤が皮膚常在菌を痛めつけ、皮膚が荒れたり、老化が早まる害についても科学的に明快に論じている。

最後に、生物進化の過程から皮膚の機能を検討している。皮膚の表皮細胞が神経伝達物質を分泌し、外部から与えられた神経伝達物質に反応して傷からの回復が早まる事実を示し、外胚葉である皮膚は元々情報を伝達する働きを持っていて、それが生物が複雑になるにつれて統合され神経系統ができたことを示す。また皮膚の感覚は真皮内の感覚受容器から神経系を通じて伝えられるものと、皮膚自体に感覚を伝える働きがあり、健康な状態を維持しているのだろうと示唆している。
趣味の音楽のことも書かれてあり、刺激的な本だ。

「痴呆老人は何を見ているか」大井玄著、新潮選書、700円 (H21.3.25)

 題名から感じられるよりもずっと奥深い内容の本だ。
「痴呆」になったら延命措置を拒否する理由として、日本では圧倒的多数が「家族や周囲の人に迷惑をかけたくないから」と答える(日本尊厳死協会のアンケート調査)。一方、アメリカを中心とした欧米の文献からうかがわれる「痴呆を怖れる理由」は、圧倒的に「自己の自立性が失われるから」である。日本と比較しアメリカには非常に多数のアルツハイマー病患者が存在し、ものすごい勢いで増えてきている。日本でもこれからますます増加するのではないかと思われる。

 他者との関わりを重視する日本的な態度が失われつつあることが、 認知症の発症に大きく関わっている。認知能力の低下が不安を引き起こし、周囲と摩擦を生じて悪循環に陥る。それを避けるために過去の記憶の世界につながりを求めようとする心理作用が生じる。

 著者は自分とは何か、自分はどんな世界に生きているのかについて哲学的心理学的考察をする。認知症があるからといって正常な人とそうは変わらない。一見理解不能な認知症の人の行動も、その人の抱える不安から理解することができる。ただの物忘れだったものが、せわしない競争社会に適応できないために認知症の症状に進み、家族・周囲の理解の不足により徘徊、暴言・暴行などの症状を引き起こすことになる。

 著者は、日本特有の引きこもり現象についても考察し、認知能力の衰えはないものの、世界とつながることができずに強い不安の中にいることでは同じであると指摘している。さらに幕末の江戸時代に言及し、閉鎖的環境の中でつながりを大事にする生き方は、現在の我々も大いに参考にする必要があると示唆している。

 認知症は誰にも降り掛かる問題だ。認知症を早期に見つけて治療すれば良くなる、ということでネットワーク作りの動きがあるが、それだけでなく認知症があっても安心して暮らせるような社会を作ることが大事だと思う。認知症を理解するのに医学は勿論、心理学や仏教の視点を取り入れた著者の見方は非常に新鮮に感じられた。

『奇跡の脳』ジル・ボルト・テイラー著、竹内薫訳、新潮社、本体1,700円H21.3.25)

 著者は神経解剖学者、脳バンクで精神疾患に関する知識を広める活動を熱心に行なっていた。 1996年12月10日37歳の著者は脳動脈奇形破裂による脳卒中を発症した。左頭頂から後頭にかけての大きな出血により、左大脳半球の機能が時とともに失われて行く様子がリアルに描写されている。

 麻痺により歩行ができなくなり、部屋の中の様子も3次元の世界として認識できなくなる。時の流れがなくなり、数も文字も認識できなくなり、自分の身体の領域が不明になり、そのまま世界につながっている感覚の中にいる。普段活発な左脳の活動が抑制され、ほとんど右脳だけの世界は、平和な世界だった。そのまま横になれば元の世界に帰ることができなくなると感じて、意識が一時的に改善した時に同僚の電話番号をやっと思い出し、声にならない声で緊急事態を伝える事ができた。

 入院したが、音や光など種々の刺激に非常に過敏になっていて、考える事もしゃべることもできなくなってしまい、理解のない医療従事者には困らされた。遠くに住む母親に看病に来てもらってから 手術予定が決まり、自宅に帰り、 左の脳の回復のためのリハビリを母親に支えてもらって始めた。オーダーメイドのリハビリプログラムであった。失った機能を回復することは、すべてがゼロからのスタートで、何もかも教えてもらわなければならなかった。毎日少しずつ課題をこなし、十分に睡眠をとった。できないことを嘆くのでなく、たとえ少しでもできるようになったことを喜びながら毎日少しずつ進歩していった。

 クリスマスの後に手術を受けた。発作が起きて4か月後には予定してあった講演を行なうことができた。その後も機能は次第に回復し、脳卒中の2年後には故郷の大学で再び教壇に立てるまでに回復した。8年後にやっと流体のように感じていた身体の感覚が、ようやく固体の感じに戻ってきた。毎日運動し、仕事や趣味だけでなく社会的活動を活発に行なっている。

 著者は脳卒中を経験することで、右脳の意識の中核には、心の奥深くにある、静かで豊かな感覚と直接結びつく性質が存在しており、右脳は世界に対して、平和、愛、喜び、そして同情をけなげに表現し続けていると知った。

 また、著者は回復の過程で「頑固で傲慢で、嫉妬深い性格が、傷ついた左脳の自我の中枢に存在する」ことを知った。そして、努力して、意識的にそういう古い回路の一部を蘇らせずに、左脳マインドの自我中枢を回復させる道を選んだ。

 人間の多くの反応は自動化されている。否定的な考えが起きても放っておけば90秒で収まるが、いつまでもそれが続くのは無意識の内に選択をしたからだ。右脳の領域に踏み込んで、思考を現在の瞬間に引き戻し、平和と愛の心に戻れることを知っていれば、束縛から解放される。

 著者はもともと芸術のセンスがあり、数字の記憶の仕方でもイメージで覚えるようなところがあって、右脳の活動が優れていた。母親の深い愛情と周囲の厚意に支えられ脳卒中の貴重な経験を持って帰ってきた。現実の世界で理想に向かって進むには、右脳、左脳がバランスを取って活動することが必要なのだ。また幸せは足下にあり、この世での務めを果たした魂は、意識がなくなるとともにその平和な世界に戻っていくのだ。

"Prevent and Reverse Heart Disease"by Dr.Caldwell B.Esselstyn,Jr.(英文)(H20.8.28)

著者はクリーブランドクリニックで35年以上外科医、臨床医、研究者として活躍していた。著者の20年以上に及ぶ臨床研究で、プラントベース、オイルフリーの食事により、虚血性心疾患の進行が抑えられるだけでなく、元に戻すことができるという主張が裏づけられた。

44歳の医師が心臓発作を起こした。彼には心臓病の家族歴がなく、肥満、糖尿病、高血圧も高コレステロール血症もなかった。心血管造影で冠動脈左前下行枝の下部1/3に著明な病変があったが、解剖学的理由でバイパス手術などの処置の適応外となり、諦めるしかなかった。
彼は職場の先輩であった著者に相談し、藁にもすがる思いで著者の勧める食事療法をしっかり行なったところ、高脂血症治療薬を使わずに総コレステロールが156mg/dLから89mg/dL、悪玉のLDL-コレステロールが98mg/dLから38mg/dLに低下した。
食事療法をしっかり続けて2年半経った時、あまりに多忙で、非常なストレスがあり、再び胸部に不快感を感じ、狭心症発作の再発が疑われ冠動脈造影を受けたところ、全く正常になっていた(証拠の写真が紹介されている)。

この例の他に何度もバイパス手術やステントによる治療を受けた患者さん、処置の仕様がないと医者に匙を投げられた患者さんが、この食事療法により驚異的な回復を示した例が具体的に多数紹介されている。

このダイエットは、心臓病の予防・治療だけでなく、高血圧、糖尿病、乳癌、大腸がん、前立腺がんなどの生活習慣病の予防にもなる(アレルギーもなくなる)。

著者は、いわゆる地中海式ダイエットの不十分さを示す。またDr.Ornishのダイエットでは、コレステロール低下薬を使わずに、リラックス法や瞑想法を勧めているが、著者が勧めるダイエットは食事療法だけでOKという単純さを強調している(もっとも食事が変わると自然に生き方、考え方も変わることになる)。

では、どういうものをどうやって食べたらよいか?この本の第2部には著者の奥様Crile Esselstynによるレシピ—朝食、サラダ、スープ、ドレッシング、メインディッシュにデザートまで160ページにもわたりたっぷりと紹介されている。

著者の心臓病撲滅に対する情熱がひしひしと伝わってくる本だ。医者でも薬でも手術でもなく、他ならぬ自分自身に人生を変え健康を手に入れる力が備わっているのだ、ということが納得できる大変良い本だ。

(参考1)Dr.Vogelの実験は、50グラムの脂肪と900カロリーのファストフードの朝食を取ると、動脈を圧迫してからの回復が脂肪を含まない朝食を取った者よりもずっと遅れることを示した。血管内皮細胞のNO(一酸化窒素)産生をモニターすると、高脂肪の食事を取って2時間後に著明に低下し、回復するのに約6時間かかることを示した。(3食ともファストフードでは回復する時間がない!)

血管の内皮細胞は一酸化窒素を産生していて、それは以下の働きをすることが分かっている。
1)血管壁を緩め、必要な臓器に血液を送る。
2)白血球と血小板がくっつきやすくなりプラークを作るのを予防する。
3)動脈の平滑筋がプラークに侵入するのを防ぐ。
4)出来てしまったプラークが縮小するのも助ける。

(参考2)一酸化窒素を産生するのに最も重要な要素はL-アルギニン(一酸化窒素合成酵素)で、多くの植物性食品、特に豆類やナッツ類に多く含まれている。高コレステロール、高中性脂肪、高ホモシステイン、インスリン抵抗性、高血圧、喫煙はDDAHという酵素の活性を抑えることによりADMAという拮抗酵素の働きを高めることによりNO合成酵素の活性が抑制されNO産生が低下する。

「大養生の作法ー人生最終章の生き方のコツ」早川一光(はやかわかずてる)著、角川 oneテーマ21、本体686円+税(H19.10.16)

京都の西陣で50年以上に亘り医師を続け、「わらじ医者」として有名 な早川先生の近著です。「人間は生きてきたように老い、老いてきた ように死を迎える」ことをテーマとし、よりよく生き、よりよく死ぬに はどうしたらよいかを教えてくれます。

まず自分が存在することの摩訶不思議に気づき、周囲の人々とのご縁 に感謝すること。新しいことに興味を持ち、生き甲斐を求め続ける。生 き甲斐は与えられるものではなく、自ら求めるものであり、そのことで 毎日張りのある暮らしができることになる。

人様から受けた好意に感謝し、どうしたら家族が喜ぶか、近所の人の 役に立てるかを考え実行することで、豊かな毎日が送れる。

著者は、長年の経験から「病気があるから健康である」という結論を得た。年 を取ったらどこかに故障があるのは当たり前である。病と病気は異な る。病は臓器の故障であり、病を気にしたときに病気と言う。病を得て もそれに押しつぶされず、乗り越えてうまく付き合うことができれば病 気ではない、と著者は言う。そして生・老・病・死の苦を乗り越えてい く努力が養生であるとも述べる。

著者は、お年寄りの病気は治さずに、故障は故障のまま悪化しないよ うケアして、寿命一杯生き抜かせることに力を注ぐ医療をする決心をし た。悪いところを見つけるよりも、良いところがどれだけ残っているか を見つけるようにしている。病と仲良くして生きていくことが大事であ る。そして最後は誰かの世話にならなければならないので、あらかじめ 頼んでおくとよい。

「老」の養生:老化による排尿障害の実態が生々しく示され、睡眠障害に対するユニークな見方が示さ れた。「読む、書く、ソロバン」で心の活性化をすることの重要性、「働く」「笑う」、そして自分の価値は自分でつくる、ということ で、誰もが死ぬまで存在する価値を持っているが、何もしなければ、そ の価値に気づいてもらえない、いくつになっても自分でその価値を作り 出すことが大切だ、と述べている。

「呆」の養生:普通には理解できないので「異常行動」というレッテル を貼っておしまいにしてしまうが、その人の人生を遠くまで振り返って見ることで、自 分ではどうしようもない「不安」や「戸惑い」から起こった行動である と納得いくものもあるだろう。もしも自分がその人だったらどう感じる か、などと想像力をたくましく働かすことで「異常行動」にも理解が得られ、心のこもったよりよい介護をするこ とができるようになる。

また、どういうタイプがボケにくいか、を述べ、感動すること、歌、 化粧、恋心で”ボケ養生”ができると述べています。そして、ボケさせ ないためには家族の接し方が非常に重要であると述べています。

「死」の養生:早川先生の生い立ちとこれまでの医療活動について記 述。「よい死に方」をするための養生について具体的に述べられています。

以上、早川先生の長年地域医療を担ってきた臨床医としての経験に基づく知恵が、人 間・人生への暖かい眼差しを通して語られます。大養生の最良のお手本である早川先生のお人柄に触れることの出来る良書で、多くの人に読んでもらいたいと思います。

なお、「わらじ医者」早川一光先生のホームページはこちらです。

「内臓脂肪『そうじ』力」旭丘光志著 経済界刊 定価1,429円+税(H18.6.6)

メタボリックシンドロームに対する補完代替医療の実際について、様々な面からの具体的な記述があります。特にキチン・キトサンを中心とした機能性食品群を上手に使うことが勧められています。もちろん食事に注意し、適度な運動も大切です。

「フィット・フォー・ライフ」ハーヴィー&マリリン・ダイアモンド著、松田麻美子訳、グスコー出版刊、定価2,100円+税

(平成18年4月18日)

松田麻美子先生の訳された本が出版されました。以前キングベアー出版から出ていた「ライフスタイル革命」は絶版になっていましたが、この度松田先生の新たな解説も加えてグスコー出版から上梓されました。ナチュラル・ハイジーンの教科書ともいえるものです。興味のある方は是非お読みください。

「お医者さんがすすめる代替療法」

(平成18年3月23日)

帯津三敬病院名誉院長、日本ホリスティック医学協会会長の帯津良一先生監修、学習研究社刊、定価1,900円+税

54種類にも及ぶ代替療法の解説と日本全国80ヶ所以上もの医療機関の紹介が掲載されています。代替療法を実際に行っている医師による紹介である点で貴重な本だと言えます。

この中には矢追博美先生による矢追インパクト療法の解説があり、他2施設と共に坂戸西診療所での診療内容の説明が載っています。YITだけでなく、種々の代替療法に関心のある方にお勧めの本です。

「フルモニ!フルーツ・モーニング超健康ダイエット宣言」松田麻美子著、グスコー出版刊、定価1,000円+税

(平成17年5月13日)

ナチュラルハイジーンのエッセンスが大変分かりやすく紹介されています。カラフルなイラストと相俟ってお勧めの一冊です。皆さんどうぞお読み下さい。

「50代からの超健康革命」松田麻美子著、グスコー出版刊、定価1,800円+税。

(平成16年10月20日)
松田先生の超健康革命シリーズ第3弾。
生活習慣を変えた方がよいのはわかっているものの、なかなか踏ん切りがつかないという中高年の方にお勧めです。

第1部理論編、第2部実践者編、第3部食生活実践編の3部からなり、「ナチュラル・ハイジーン」という健康理論に基づく「若返りと健康に関する原則」を自ら実践し理解するための知識が満載されています。大変刺激的な本です。

実例について目次から引用します。

バイパス手術を回避し、57歳で狭心症を克服した教師
コレステロール値が4週間で20%減少
大動脈剥離から7年経過、今はジム通いの70歳
乳ガンかた23年経過、鉄人女性アスリートは70歳
58歳のとき乳ガンを克服した87歳の女性ボランティア
70歳で関節リウマチと神経痛を克服した茶道教師
薬漬け生活から脱却、その後の44年を見事に生きたサラリーマン
など多くの驚くべき実例が紹介されています。
 

「子供たちは何を食べればいいのか」松田麻美子著、グスコー出版、定価1,400円 +税

(平成15年7月17日)
 好評の「常識破りの超健康革命」に続く松田先生の超健康革命シリーズ第2弾です。

 日本では他に類を見ない画期的な本です。食べ物の選択と健康・食事の関係についての常識がいかに間違っているかが明解に書かれており、初めてお読みになる方はショックをお受けになると思います。

 子育て中の方だけでなく、妊娠・出産を控えている方にも、健康のための具体的な食事が掲載されていて、大変参考になります。もちろん健康と食事に関心のある全ての方にお勧めです。

「だれもが100%スリム!常識破りの超健康革命」松田麻美子著、グスコー出版、定価1,200円 +税

(平成14年3月6日)

「ライフスタイル革命」を翻訳された松田先生が、健康に関心ある日本人向けに情熱を傾けて書かれた本です。人間の生理にもとづき、最新の研究を踏まえた画期的な本です。多くの人がお読みになって、本当の健康を取り戻し、充実した日々を送られることを願っています。

 本の帯の内容を以下に紹介します。かなり衝撃的だと思います。

 ●「バランスのとれた食事」をとっていると病気になる!

 ●果物をたっぷり食べたほうが糖尿病は完治する!

 ●牛乳に含まれるカゼインは強力な化学発ガン物質である!

 ●骨粗鬆症発症率のワースト3は、アメリカ、ノルウェー、スウェーデンの酪農大国である!

 ●野菜や果物より動物性食品のほうが汚染されている!

 ●医者のストライキがあると死亡率が激減する!

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